キミの手 キミの体温
覆いかぶさって下になった千愛が不安げに俺を見上げてる。
「……千愛を抱きたい」
頷いてくれた千愛が不安そうにしてるのは……怖いとかそんなのじゃない気がした。
前に途中で気分が悪くなった俺を心配して気遣うような……。
そんな案じた眼差しに、大丈夫だって伝える代わりにキスをした。
「俺を受け入れて。……もう絶対に逃げ出さないから」
「……うん。一緒に生きていこ」
重ねた手のひらと触れた素肌に、あの時みたいな苦痛は訪れない。
全てを知っても千愛は俺を受け入れてくれた。
だからもう怖くない。
思い出したくない辛い過去も戻らない思い出も……。
今この手の中に千愛の体温がある限り俺は乗り越えられる気がした。