キミの手 キミの体温

冬の夕暮れ空は一瞬しか留まらず、あっという間に夜空を連れてきてしまう。



宝珠、どこに行ったんだろう。

もしかしたら今日は帰らないのかも……。



かじかみ始めた手をゴシゴシと摺り合わせ、真っ暗になった夜空を見上げた時だった。



「……おまえ」



数歩先には真っ黒いスーツを来た宝珠が、驚いたように目を見開いて立っていて、


「宝っ……舟瀬くん」



とっさに上げた声を慌てて飲み込んだ。



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