キミの手 キミの体温
無言の宝珠に促されて通された部屋は、必要な家具だけが整然と並べられていた。
生活感は微かにあるものの、部屋の風景はどこか寂しげに映る。
木目調のテーブルに二客の椅子が向かい合わせて置かれ、躊躇いがちに奥の椅子に腰をかけた。
「……ありがとう」
宝珠が出してくれた薄桃色のカップから、ふわりとオレンジの香りが漂う。
紅茶の中に浮かぶマーマレードは、瑠璃おばさんがいつも淹れてくれたモノと同じだ……。
これは偶然なんかじゃない。
宝珠はきっと、わたしのこと覚えてる。