キミの手 キミの体温

予鈴と共に教室から出て行く担任を見送って、


「あ……わたしクラス委員だから」


振り向き様に浮かべた笑顔が、上手く笑えてないってわかる。



ぎこちなく笑うわたしを見る宝珠の目は、思い出とはかけ離れてて、


「……渋木 千愛っていうの。よろしくね」



思い出してって希望を込めて名乗ったわたしを一瞥し、


「……よろしく」



さっきまでとは違う、綺麗で冷たい瞳で見つめていた。



「…………」



その冷たい眼差しに思わず一瞬間、呼吸を忘れてしまう。



あんなに冷えた宝珠の瞳を見るの、初めてだ……。


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