キミの手 キミの体温

「母さんのことも、小さい頃のことも。俺は全部忘れたいのに」



いつの間にか、立ち上がった宝珠はわたしの傍らに居て、



「アンタが居たら邪魔なんだよ。思い出したくないことばかり頭に浮かぶ」


「宝珠……」



長く白い指に顎を掴まれ、無理矢理に顔を上げられる。



間近に迫る宝珠の顔は、あの頃とはかけ離れていて。


目の前の宝珠の冷えた瞳に映るわたしは、


「なのに。思い出せって言って来るのが鬱陶しくて仕方なかった」



ずっと……宝珠の心の痛みに、無神経にも触れ続けていたんだって気付かされた。

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