キミの手 キミの体温
あれ以来、わたしが宝珠に話し掛けることはなくなった。
もちろん、宝珠から話し掛けてくることなんてあるワケもない。
「舟瀬くん! お昼一緒に食べようよ!」
あの日から何日かが過ぎても、相変わらず後ろの席には頻繁に人がやってきていた。
噂の転入生はもう転入生であることすら忘れてしまう程、クラスに馴染みきっている。
……これで良かったんだ。
例え宝珠と関われなくても、こうして毎日宝珠を見ることが出来るだけで……。
素直にそう言えるまでどれくらいかかるかはわからないけど。
それが宝珠の為だって必死に言い聞かせることが、今のわたしの精一杯だった。