キミの手 キミの体温


わたしのこと、覚えてない?



継ごうとした二の句が、


「ねぇ! 舟瀬くんどっから引っ越して来たの~?」



群がってきたクラスメートの波にかき消されていった。



転入生には切っても切り離せない、初日の質問攻めの光景。



クラスメートたちに愛想笑いを振りまく宝珠。




もしかしたら……知り合いってバレたら騒がれちゃうからかな?

だから、宝珠は何も言わないんだ。




あっという間に人垣に埋もれた宝珠を見つめながら納得する。



だったら放課後。
学校の中を案内して、二人で話してみよ。



そしたらきっと、わたしだって気付いて……昔みたいに優しく笑ってくれるはず。




そう思ったら途端にさっきの宝珠の冷えた眼差しなんて頭から消えて、放課後が待ち遠しくて仕方なくなっていた。



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