キミの手 キミの体温
「やり直そう千愛。俺やっぱりおまえが好きだ」
「っ……」
真剣な眼差しと紡がれた言葉に、全身が絡めとられる感覚。
周助がわたしのことをまだ、好きで居てくれたこと。
気持ちは嬉しいのに、素直に喜べない。
胸の中に苦い甘みが広がっていくのがわかる。
「周助……」
ふっと頭に浮かぶのは、冷たい宝珠の眼差しと昔の笑顔。
目の前では、ずっと見守っていてくれた周助がわたしの答えを待っている。
ここで頷いたらわたしは宝珠を忘れて、わたしも宝珠も辛い思いをしなくなるの……?
「わたし……」
不意に宝珠のマンションで見た、痛々しげな表情が蘇る。