キミの手 キミの体温
「つーワケだから、俺に千愛を幸せにする権利ねぇから」
「はっ? 何言ってんだよ」
差し出した煙草を一本抜き取り、口にくわえた瞬間舟瀬が目をまんまるくさせた。
昨日の今日でいきなり、失恋宣言されたらさすがにこんな顔にもなるか。
普段の澄ました顔が遠慮なく間抜けなボケボケした顔になってて、少し面白い。
「何って……だから。わたし、ずっと宝珠が好きなのって言われたって言ってんだろ」
「そんなの無視しろよ」
「出来たらしてる。出来ねぇからここに居るんだし」
キッパリと答えた俺に、舟瀬は一旦煙草を口から離して溜め息をついた。