キミの手 キミの体温
泣き虫のわたしをいつも慰めて、助けてくれてた優しい宝珠が不意に頭に浮かんだ。
“千愛、泣かないで。笑ってる方が千愛は可愛いよ”
甘く優しい思い出に胸がふわっと暖かくなる。
昔から宝珠は優しかったから、集まってくる人たちを無碍に出来ないんだ。
「なんか嬉しそうだな、千愛」
「ホントだ。エビフライ食わえてにやけてる」
フォークに刺したエビフライを口に運びながら、自然と顔は綻びてしまっていた。
「な、何でもないよっ!」
「おまえも浮かれてんじゃねぇの? イケメン転入生に」
「そうなの? 千愛って案外ミーハーだね」
「もう! 二人してからかわないでよっ」
浮かれてる……かな。
でも絶対、ミーハーとかじゃない。
だってこれは、好きな人との再会。
嬉しくないワケがないもん。
わたしを訝しむ二人に笑って誤魔化しながら、しばらくは頭の中の思い出の余韻に浸っていた。