キミの手 キミの体温
「宝珠?」
「えっ」
「どうしたの?」
呼ばれた声でふっと意識を戻せば、白奈(しろな)が不思議そうな顔で俺を見上げていた。
ソファーに身を沈めて、ぼんやりと考え事をしていた俺が珍しかったのか、
「何かあった?」
二歳年下の同居人は心配そうに眉を顰めて、俺に手を伸ばしてきた。
「いや。何も」
白奈の長い腕を手のひらで軽く制し、小さく笑い返す。
俺に拒まれたのを不満そうに顔に出し、
「また……宝珠は何も言ってくれない」
「何も無いのに言えるワケないだろ」
口を尖らせながら、俺の左腕にぎゅっと抱きついてきた。