キミの手 キミの体温

「あたしじゃ宝珠の力になれないの?」


素早く俺の膝の上に座り直した白奈が、潤んだ瞳でこちらを見つめながら顔を寄せてくる。



“キスは好きな人としかしたらダメ”



それを俺に教えたのは、俺を憎いと罵りながら体を重ねてきた恵璃さんだ。



顔も知らない俺の父親。


なのに。


皮肉にも15になった頃には、俺の顔は日を追うごと父親に近付いていき……。



母さんの愛した人を密かに想い、姉に嫉妬していた恵璃さんに優しい笑顔の面影は無くなっていた。



代わりに、



「姉さんばかり幸せになって……」



中学生だった俺の体に散々、女を叩き込みながら最後には必ずこう言って泣いた。



優しかった恵璃さんの面影が、哀しく消えていく。



行く場所なんて無い俺には耐えることしか出来ない。


ただ静かに、心が壊れていく感覚だけが頭に妬きついていった。


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