キミの手 キミの体温

「……はぁ。千愛って意外と頑固だったんだ」



ずっと張り詰めていたわたしたちの空気が、水希の苦笑いと同時にすぅっと晴れていく。




やれやれって肩を竦めた水希に一瞬呆気に取られたわたしに、


「こうなったら全面的に協力するっ。あの冷血漢の目を千愛の愛で覚まさせてやろ」



わざとらしい程の大きな身振りと声で励ましてくれる水希に、


「……水希」



涙腺がゆるゆると緩みだして喉が詰まる。



「舟瀬くんを諦めても想い続けても千愛が泣くなら……わたしも周助も泣き止むまで傍に居るからさ」



優しい声でこう言って、水希はふわふわのハンカチを差し出してくれた。



いつだって水希はこうして無条件でわたしの味方をしてくれる。



水希の優しさと温もりのこもったハンカチを握り締めながら、言い足りないありがとうを何度も何度も繰り返した。


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