キミの手 キミの体温
「千愛どうするの?」
ぼんやりと二人の背中を見つめていたわたしに、不意に水希が呼び掛ける。
「どうするって……」
「舟瀬くんの本音聞きに行くんでしょ? 一緒に行こうか?」
首を小さく傾げながら顔を覗き込む水希の表情はどことなく心配そうだ。
水希が言ってたみたいにまた宝珠に突き放されて傷付くのは辛い。
それでも。
水希や周助がついてくれてるって思うだけで、何倍も強くなれる気がする。
「ううん、一人で行くよ。ありがと」
だからわたしは二人がくれた勇気と、10年分の気持ちを持って宝珠と向き合うよ。
そんな決意を込めて笑みを浮かべると、
「じゃ、周助と待ってる。千愛が泣いても良いように箱ティッシュ用意して」
にっと顔一杯の笑顔で背中を押してくれた。
泣いても良いって送り出してくれると、安心感でふっと心が軽くなる。
「うんっ。わかったよ」
だから。
水希に負けないくらいの笑顔で、うんって頷いてみせた。