Tears
暑い日差しが照り付ける
夏真っ盛りのある日の朝
誰もいないリビングで
私は一人入り口に立ち
辺りを見回した。
机の上には綺麗に盛りつけ
されたハムエッグと少しだけ
焦げ目のついた食パンが
丁寧に置かれていた。
ふと視線を横にずらすと
“仕事早めに行ってきます”
と書かれたメモ用紙が
置かれていた。
「なんだ、仕事か。」
それだけ言うと私は読んで
必要なくなったメモ用紙を
ゴミ箱に捨てた。
「おはよ、愛」
メモ用紙を捨て朝ごはんを
食べようと席に着こうとした
私に声を掛けてきたのは、
晴樹だった。
松永晴樹。近くの塾の講師を
している童顔の21歳。
私、松永愛の好きな人
でもあり、
私のたった一人の
お兄ちゃん。