淡い満月
「看護師さんが自信なくすとこなんて、俺初めて見た。」
看護師さんがいなくなってもまだ、彼は笑いをこらえていた。
隣でこんなに笑われてると、何だか調子狂う…。
落ち着いた黒髪で、きれいな顔立ち。
見た目は近寄り難い雰囲気なのに、さっきから笑ってばかりだ。
「あのー…。」
「…ごめんね。俺、片桐って言います。」
「あ、初めまして。」
やっと笑いがおさまった彼は、軽く頭を下げた。
「えーっと、名前は?」
「新垣、小波です。」
「小波さん、ね。」
突然名前を呼ばれて、不覚にもドキッとしてしまう。
低音で優しい声は私の心を揺らした。