淡い満月
彼は片桐春樹(はるき)。
年は私より9歳上の、27歳。
人懐っこい笑顔で、私のフィルターを破った人。
「ずいぶん寝てたみたいだけど、疲れてたの?」
「あ、集中治療室にいたので…。」
口がすべったと思った。
どうして入院してるかなんて聞かれたらどうしよう…。
「そうなんだ。あ、俺話しかけちゃったけど大丈夫!?」
「…え?」
聞かないの?
「え、あ…ごめん!そう言うの全然分かんなくて。」
あたふたし出した彼を見ていたら、急に力が抜けた。
構えていた自分が馬鹿らしく思えるよ。
「え、俺笑われてる?」
「くすくす…。」
久しぶりに笑った気がする。
もう何ヶ月も笑ってなかった私の顔は、うまく笑顔を作れていないだろう。
「あはははは…っ。」
それでも、一緒に笑ってくれる人がいるから気にならなかった。