淡い満月
温かい手
翌日、片桐さんは朝食が運ばれてきた頃に起きた。
私はそれより1時間前から起きていたんだけど、やっぱり集中治療室とは違った雰囲気。
機械がないから静かだし、人も少なくて落ち着く。
カーテンはかかっていたけど、隣が起きたかどうかくらいは分かった。
「あれ?小波さん起きてたの?」
「あ、おはようございます。」
カーテンを少し開けて、顔を出した片桐さんは目を丸くしていた。
「どうしたんですか?」
「いや、昨晩は暗くてあんまり見えなかったから…。」
体を乗り出して、まじまじと私を見ている。
昨日は気づかなかったけど、この人……変だ。
「………。」
何だか恥ずかしくなってきたので、ガーゼだらけの左腕をまくって彼の前に出してみた。
「わ!ひでー。」
そう言って眉を下げて笑う。
点滴の件に関しては、かなりツボにはまったらしい。
私も少し笑った。