淡い満月
忘れてはいけないと思いながらも、忘れてしまいたかった。
「………。」
オムライスなんて食べなきゃ良かったな。
胸が苦しくなって、味がしょっぱくなる。
「大丈夫?気分悪い?」
いつの間にか開いていたカーテンの向こうで、心配そうな声がする。
片桐さんはこんな私でも、優しく接してくれるんだ…。
「ごめんなさい、ちょっと考えごとしてただけです。」
…違う。
優しく接してくれるのは、私のことを知らないからだ。
私は優しくされる資格なんて、少しもないんだから。
「美味しいですね。」
「だろー?俺オムライス好きなんだ。」
そんな笑顔で私を見ないで。