淡い満月
 
 
成り行きで、ココアを飲みながら椅子に座って少し話そうということになった。


片桐さんは猫舌らしく、時折「あちっ」という小声を漏らしては恥ずかしそうに少し笑う。


そんな些細なことで幸せを感じて口元が緩んだ。




「学校は今どうしてるの?」

「しばらく休むように言われてるんです。」



現実から離れた日々を送っていたせいか、自分が高校生だということをすっかり忘れていた。


「高校生――…。」

「不安だよな、元の生活に戻るのは。」



それに、彼はこんなに明るくても私と同じ気持ちの人だったということも。
 
 
 
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