淡い満月
いらない自分
とうとう帰って来た。
病院の外に広がっているのは、私が去る前と何も変わらない現実の世界。
重い荷物を抱えて両親の待つ車に向かった。
「ただいまー。」
家の玄関まで来て、私が開けるのに躊躇していたドアは
父によっていとも簡単に開けられてしまう。
みんなが簡単に手をかけるドアも、私には重い壁に見えることがあった。
開けない方がいいって言われているみたいに。
荷物を置いてすぐに2階の自室へ向かった。
ここが家で一番、現実の空気が薄いところ。
「何も考えちゃ駄目、何も考えちゃ駄目だ…。」
余計なことを考えてしまう前に、心も体も休めよう。
そのまま、ベッドに顔を沈めた。