淡い満月
 
 
お墓は駅からそんなに離れていない。

車のほとんど通らない静かな道を通り、お墓の近くまで来たところであることに気づいた。



「水、買わなきゃ。」


最後までうっかりしてるなぁ。

誰かが止めてくれてるのかもしれないなんて思いながら、今来た道をまた歩き出す。





自動販売機で水を買おうとしたら、反対側からの電車が駅に止まった。


「…お墓参りかな?」


駅から黒い服を着た男の人が出て行く。

私が水を買い終わって振り返った頃には、見えなくなっていた。




お墓まで戻ったところで

「さっきの人、やっぱりお墓参りだったんだ。」


誰かのお墓の前で何もしないで立っているように見える。



人がいたら飲めないから、しばらく私もお墓参りをして待つことにした。
 
 
 
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