淡い満月
そのあとも、たわいもない話題が続いて
「俺、エビ8匹だった。」
「数えてたんですか!?」
お姉ちゃんのことには一切触れなかった。
片桐さんは自分の恋人の妹が、今目の前にいることを知らない。
たまたま再会した知り合い。ちょっとした友人。同じ境遇の仲間。
それくらいの存在にしか思ってない。
これ以上知られたくない気持ちと、もっと知って欲しい気持ち。
いつまでも私の頭でぐるぐる回っていた。
「しまった、帰りの金がない。」
ファミレスを出てすぐ、彼が思い出したように頭を抱えた。
結局またおごってもらってしまったので、私が悪いんだけど…。
「やっぱりお金返しますよ。」
「いや、大丈夫!頑張れば歩いて帰れる距離だから。」
そうやって断るあたりも、彼らしいなって思う。