淡い満月
 
 
片桐さんがこんなに驚いてる顔、初めてみた。

…って、のんきなこと言ってる場合じゃないんだって。



「ど、どうしましょう…。」

「小波さん、家までどれくらいかかる?」

「電車で30分…くらい。」



こんなに困ってる彼も初めて見たかも。

なんて、自分のことなのに他人事のように思っていた。


もしかしたら、もうどうなってもいいやって投げやりな気持ちだったのかもしれない。





だからかな?


「俺の家…来る?」


私が驚いたのは彼の言葉だけじゃない。



「歩いて30分のアパートだけど…。」


そこには小さく頷いている私がいた。
 
 
 
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