淡い満月
ファミレスを出て、さっきと反対の方向に歩く。
お店が見えなくなって、長い橋に差しかかるまで会話のない時間が過ぎていた。
本当にいいのかな?
でも、断る理由もないし…。
少し前を歩いている片桐さんの背中を見ていたら、家に向かうことが不安になってきた。
手を伸ばして黒い服の裾をつかむ。
「…ん?」
「………。」
何て言おう…。
不安ですって失礼かな?
「あの…。」
彼の服を軽くつかんだままの私と、そんな私を黙って見ている彼。
秋の風が少し冷たく感じる。
「…………。」
彼がしゃべらないなんて初めてだ。
困らせてるんだろうなと思いながらも、手を離せないでいた。