淡い満月
「男の部屋に着てそんな顔で好きとか言うもんじゃない。」
片桐さんは私をその場に残して、先に奥まで行ってしまった。
「え?」
そんな顔って…。
「…どんな顔…?」
もしかして、好きって顔してたのかもしれない。
私は廊下の鏡で自分の顔を見て、頬を軽く叩いた。
いけない。
しっかりしろ、自分。
「早く入っておいで。」
「は、はい!」
時刻は午後3時。
今日、このアパートを出るまでに私が隠していることを彼に話そう。
彼への想いも、今日限りにしよう。
鏡の自分と約束を交わして、彼の待つ部屋に向かった。