淡い満月
「あの…っ。」
空のコップを握りしめて、彼に声をかけたときだった。
立ち上がった拍子に私のポケットから何かが転がり落ちた。
「…………。」
彼は黙ってその何かを拾い上げる。
「片桐さん…?」
自分で買った風邪薬。
初めて彼と出会ったのも、今こうして再会したのも、このビンがきっかけ。
そしてそれは、これから私の存在を消すための道具でもある。
彼が手の平で転がす度に、錠剤が小さく音を立てた。
「これ、どうした?」
バレたら私はきっと慌てるだろうと予想していたけど、実際は意外と冷静でいられた。
「……。」
弁解の余地なし、かな。