淡い満月
三日月の夜
今日は彼の言うことに従おう。
だけど、それも今晩限りだから…。
自分に言い聞かせて、私は素直に力を抜いた。
「………。」
片桐さん。
なんて温かい人。
病室にいたときのように現実を忘れさせてくれる彼の温かさに安心した私は、目を閉じてすぐに落ちるように眠り込んだ。
目を覚ました私は薄暗い天井を見て、一瞬病室に戻ったのかと思った。
だけど、ある意味で今までのことが全て夢だったら良かったのかもしれない。
体を起こすとそこは彼の部屋で
私はソファーに寝かされていた。
あれ、片桐さんは…?
薄暗い部屋には彼の姿が見当たらない。
かかっていた毛布を足元に寄せて、静かに廊下に出た。