女教師
私は真剣に彼に伝えた。しかし彼は声を高らかにして笑い出した。
 「先生、じゃあもし俺と先生が愛し合ったらセックスも自然にできるってことだよね?」
 「…そうね。あなたと私が愛し合ったらね。」
 そんなことがありえるはずがないと思っていたので私は当然のごとく答えた。こんなところで授業をさぼっている生徒を教室に返すことが私の目的なのだが彼には誰かに心を開くことを知ってもらいたかった。だから少しでも話をして彼の心に近づきたかった。
 「愛なんかなくたってやってる奴いっぱいいるだろ。所詮、セックスなんて快楽の世界なんだよ!なんならここで証明しようか?愛なんかなくたってやれるってことを…」
 そう言うと彼は私に近づいてきた。一歩一歩、ゆっくりと、私をあせらすように…。
 「やめなさい。兼山君。ふざけないで!教室に戻るわよ!」
 彼の目は獲物をとらえた野獣のような目をしていた。私の言葉など何も聞いていない。私は行き場がなくなり壁に背中をつける形になってしまった。そして彼は行き場がなくなった私を両手でふさぎ、私の鼻に自分の鼻をくっつけた。
 「先生ってかわいいよね。性格も顔も。こんな俺に真剣にセックスの話するんだもん。感激してるんだよ。だからお礼に快楽を味わわせてあげるよ。」
 そう呟くと彼は私の唇に自分の唇を押し当てた。あまりに近づきすぎた彼の顔は霞んでいてよく見えなかったことだけを感じていた。何が起こったのかよくわからなかった。いや、わからなかったんじゃなく、わかりたくなかった。突然の事態に私の体は固まってしまっていた。
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