女教師
「…だったら証拠見せてみろよ。」
 「証拠?」
 あまりの突然のことに私は素で答えた。
 「俺の心を救いたいんだろ?力になってくれんだろ?だったら、方法は一つしかねえよ…」
 私はしばらく考えた。彼の望みは肉体を差し出せということなのだろう。けれど、常識的にも法律的にもそれは許されることじゃない。まして彼はおもしろ半分からかい半分で言っている。でも私は今一人の生徒の心を救うためには何をしなければならないのか、そう考えた時、意外とすぐに結論は出た。彼の暗く閉ざされた心を私の手で開くには何らかの犠牲はやむを得ないのだと私は考えていた。
 「わかった。あなたがそんなにつらいのなら好きなようにしなさい。」
 「へえー。本当にいいの?生徒のために体張っちゃうんだ~。でも先生って淫乱だね。」
 彼はクスクスと笑うと、ジリジリ私に迫ってきた。本当は怖かった。逃げ出したいくらいに。どうして私がこんな目に合わなければならないのか、言ったあとで後悔した。逃げ出してしまいたい。でもなぜか、体は震えて動かすことができなかった。上着のボタンが一つ一つ彼の手ではずされていく。私は思い切り目をつぶった。上着がパサッと床に落ちて一枚目が脱がされた。そして二枚目のブラウスに手を伸ばす。一つまた一つとボタンがはずされ、私の肌が外気を感じるようになってきた。二枚目の服も床に落ち、キャミソールだけとなった。私は顔をできるだけ彼から離して首を思い切り横に向けた。手が震えている。全身がカタカタと音を立てて揺れていた。脇からキャミソールをめくり上げようとした時、しばらく彼の動きが静止する。私はゆっくりと目を開けた。
 彼は震えている私の手を握り、唇をつけた。私は頭が真っ白になり、彼の心情が読み取れなくなっていた。けれど、彼が唇を押し付けた私の手はとてもあたたかく感じた。
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