女教師

「…キミノパンツ、ナニイロ？」
　「はい？」
　私は受話器の向こうにいる相手に向かって思い切り疑問を投げかけた。その言葉に本当に理解できなかったからだ。そうして相手は私が何もしゃべらずにいると一方的に電話をきった。『なんなの？』と心の中で怒りながらもその日はその電話についてあまり疑問を持たずにいた。しかし、その日を境に毎晩のように変な電話がかかってくるようになるのである。
　「でっかいあくびですね～」
　私は慌てて振り返ると根岸先生があくびをしていた私にニコニコと声をかけてきた。
　「あ、すみません、仕事中に。なんか最近眠れなくて…」
　一時、間をおいて根岸先生は私に言った。
　「何かあったのですか。」
　「最近、変な電話がかかってくるんですよ～。」
　「へえ～。ストーカーもいる時代ですからね～。電話番号変えてみたらどうでしょう。…それか相手に一時の楽しみを味わわせてあげるとか…。」
　根岸先生はあまりにも坦々と話すため、私は理解するのに少しの間時間がかかった。
　「え？どういう意味ですか。」
　「あ、いや、これは僕の考えなんですけれど、そういう電話をしてくる人って寂しいからそうしてくると思うんですよ。だからちょっとでも相手の要望を叶えてやれば満足してもう電話をかけてこないんじゃないでしょうか…。まあ、人間の心理の裏ってやつかな。」
　根岸先生は頭をかきながらニヤッと笑った。私はそんな根岸先生に少しだけ鳥肌がたつのを覚えた。いや、実際には根岸先生にではなく、その毎晩かかってくる電話相手を想像してだった。