女教師
「そんな方法があるんですか。でもそれもなんだか理解しがたいですけれどそんなことで寝不足が解消されるなら…。」
 「ええ、やってみる価値はあると思いますよ。それでだめなら電話番号変えればいいだけの話ですしね。」
 私の言葉が言い終わらないうちに根岸先生は語調を強めてすかさず話し始めた。
 ―そしてその晩―
 電話の呼び出し音が無常にも部屋に響く。私はその相手がわかりきっていながらずっとその鳴り止まぬ電話を見つめ続けた。まして相手は私にとってとても不快な思いをさせる人物なのである。
 「もしもし…。」
 「キミノ、パンツ、ナニイロ…」
 私は意を決して先ほどの根岸先生の言葉を信じ思い切り目をつぶって、答えた。
 「…白、ですけど…」
 自分の声が震えているのがわかる。
 すると受話器の向こうの声からは何やら息遣いのようなものが聞こえ、それは次第に荒々しい鼻息のようにも聞き取れた。私は背筋が凍っていくような思いだったが毎晩迷惑しているこのイタズラ電話を終わらせるために必死に耐えていた。そう我慢しているうちにオペラの曲らしきものが受話器を通して私の耳に流れ込んでくる。
 「オペラ…?」
 そう私が呟くと、電話は一方的に切れた。あとにはプープット機械音だけが響いていた。そしてその日を境に電話はかかってこなくなった。

 「東~」
 学校の休み時間、彼が登校するようになってから中野樹里は毎日、彼の教室へ来るようになった。
 教科書を手にした彼はチラッと樹里を見るとまた教科書に目をやった。
 「バンド、また始めるんでしょ。嬉しい。東のバンドやってる姿私、好きなんだ~。」
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