女教師
そんな光景を見ていると私は嬉しくてもう顔がニヤけてしまいそうだったが、それより、緊張のほうが勝ってしまって筋肉が震えてうまく笑えてなかった。
 「じゃあ出席とるぞー。」
 生徒達が順序よく返事をし、教室が明るい雰囲気に変わるのを私は生徒一人一人の顔を見渡しながら感じていた。
 「兼山、兼山はまたいないのか。困ったもんだな。」
 いつものことだという口調で藤井先生は頭を掻いた。そんな藤井先生の行動を気にしているふりをしていた。なぜなら出席をとっている間中、生徒達の視線はずっと私に向けられていたことにだいぶ気をとられていたからだ。
 「では集会でもご挨拶されたと思うが今日から皆の副担任になる笹倉舞先生だ。皆学校について先生が何かわからないことがあったら親切に教えてやるんだぞ。では、笹倉先生、一言宜しくお願いします。」
 藤井先生は教壇から窓際に移動し、私を教壇に勧めた。
 私はおずおずと教壇まで進むと、生徒達に向き直り、生徒を前にした。ますます緊張が高まる。生徒達の目がらんらんと輝いた。
 「えっと、今日から皆の副担任として3Aの一員となる笹倉舞です。教科は国語を担当します。これから宜しくお願いします。」
 私は深々と礼をすると窓際にいた藤井先生が最初に拍手し、それに続くように生徒達が拍手した。普通今どきの高校生ともなればあまり教師に対して興味を持たないものだがここの生徒は違う、それが私の第一印象だった。
 「あの、藤井先生。」
 「はい、笹倉先生、どうしました?」
 3Aの挨拶が終わり、私は藤井先生と職員室に帰る途中、何気なく藤井先生にあのことを聞いてみた。
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