女教師
「あの、兼山君って子、いつも学校に来てないんでしょうか。」
私がそう切り出すと、藤井先生は細い目を一層細くして遠くを見つめていた。藤井先生は私など足元にも及ばないほどベテラン教師で生徒の人望も厚いという。まあ四十を過ぎているので当然といえば当然だが。『サバサバした性格であとくされのない人だ』と根岸先生から聞いていた。
「ああ、兼山東ね。まったく、あいつは…。困った奴でして、学校中でも有名でね。別に登校拒否とかではないのですがね、気分次第で学校に来るんですよ!まったく学校は慈善事業じゃないんだというに…。」
藤井先生はぶつぶつと思い出したように私に怒りに混じった口調をぶつけてきた。
この時まだ彼のことを真剣に考えられるほど私には余裕がなかった。次の時間、教師として初めての授業が私を待ち受けていたからだ。この時、この瞬間を何度頭の中で思い描いたことか。私ははやる気持ちをおさえ、一呼吸おいて教室のドアを開けた。
「じゃあ、今日は最初の授業なので皆のほうから先生に対して質問を書いてもらいたいと思います。何でも結構です。恋愛のこと、学校のこと、趣味や特技、今回は出血大サービスで特別に答えます!」
私がそう言うと生徒達は一斉に執筆に取りかかった。私はその間机間巡視をして回っていた。その時である。いきなり教室のドアが開くと一人の男子生徒が堂々と入ってきた。それまで静かに執筆に取りかかっていた生徒達は急にどよどよと騒ぎ始めた。騒然とし、重い雰囲気が教室中に漂っていたためか私はすぐにあの兼山東だと確信した。
「兼山君ね。」
私は確信した声でそう言うとその男子生徒は何も言わずに席についた。
「…そうだけどあんた誰?」
席についた彼は間をおいて私を少しにらむように顔を上げた。
私がそう切り出すと、藤井先生は細い目を一層細くして遠くを見つめていた。藤井先生は私など足元にも及ばないほどベテラン教師で生徒の人望も厚いという。まあ四十を過ぎているので当然といえば当然だが。『サバサバした性格であとくされのない人だ』と根岸先生から聞いていた。
「ああ、兼山東ね。まったく、あいつは…。困った奴でして、学校中でも有名でね。別に登校拒否とかではないのですがね、気分次第で学校に来るんですよ!まったく学校は慈善事業じゃないんだというに…。」
藤井先生はぶつぶつと思い出したように私に怒りに混じった口調をぶつけてきた。
この時まだ彼のことを真剣に考えられるほど私には余裕がなかった。次の時間、教師として初めての授業が私を待ち受けていたからだ。この時、この瞬間を何度頭の中で思い描いたことか。私ははやる気持ちをおさえ、一呼吸おいて教室のドアを開けた。
「じゃあ、今日は最初の授業なので皆のほうから先生に対して質問を書いてもらいたいと思います。何でも結構です。恋愛のこと、学校のこと、趣味や特技、今回は出血大サービスで特別に答えます!」
私がそう言うと生徒達は一斉に執筆に取りかかった。私はその間机間巡視をして回っていた。その時である。いきなり教室のドアが開くと一人の男子生徒が堂々と入ってきた。それまで静かに執筆に取りかかっていた生徒達は急にどよどよと騒ぎ始めた。騒然とし、重い雰囲気が教室中に漂っていたためか私はすぐにあの兼山東だと確信した。
「兼山君ね。」
私は確信した声でそう言うとその男子生徒は何も言わずに席についた。
「…そうだけどあんた誰?」
席についた彼は間をおいて私を少しにらむように顔を上げた。