女教師

「私は新しくこの学級の副担任になった笹倉です。国語担当なの。今度から授業は…いえ、学校は遅れないように来てね、兼山君。」
　そう注意をし、教室を見渡すと生徒達は私と彼に注目し誰一人執筆を行う者はなかった。私はその異様な雰囲気に不安を感じつつ、彼の兼山東の行動を見ていた。　
　「…はい、みんな、作業して！」
　私は我に返るとパンパンと手を叩いた。
　「兼山君、この紙に私への質問を書いて提出して。」
　私が用紙を差し出すと彼は意外に何も言わず、さっさと執筆に取りかかった。
　「東！」
　授業が終了し私が職員室に戻ろうとしたときだった。一人の女子生徒が心配そうな顔つきでそう叫んだのである。
　「どうしたの、今まで学校来ないで！」
　「樹里！声でかい…。」
　彼は樹里という女子生徒にうざったそうにそう言うと彼女の手を引き去っていった。
　「なんだ、同じ学校に彼女がいるんじゃない…」
　私はそう独断し安心して職員室へ戻った。
　「笹倉先生！どうでした？初授業のほうは」
　一息ついていた私に根岸先生は私の肩をポンと叩きながら言った。
　「あっ！根岸先生。まあぼちぼちってとこです。…あの、兼山東って子ご存知ですか？」
　私が彼の名前を出した瞬間、根岸先生の顔から急に笑顔が消え、深刻な眼差しに変わった。
　「あー、えー、まあ…」
　「今日、私の授業に来たんですよ。藤井先生にもお聞きしたんですがどういう子か何かご存知ですか？」
　「…彼とはあまり関わらないほうが身のためですよ。」