女教師

教壇に立ち、ふと目がとまった。あの彼の兼山東のガールフレンドらしき少女がいたのだ。彼女は私と目が合うとにらみつけ、目をそらした。
「あの、兼山君とさっき話してたよね、あなた。…あ、名前まだ覚えてなくてごめんね。」
授業が終わり、彼女を廊下に呼び出すと、私は彼女にそう尋ねた。
「…先生、さっき東を殴ったんだってね。どうしてそんなことすんの。おかしくない？」
ギャル言葉で彼女は私を責める。
「東はね、親が…！」
そこまで言った瞬間、彼女は口を閉じてしまった。
「親？親がどうかしたの？」
「はっ！？先生何も知らないんだね。ま、他人のあんたにはどうでもいいことか。」
彼女は勝ち誇ったように私にそんな言葉を投げかけた。その時２、３人の女の子が彼女の元に集まり、私を一斉ににらみつけた。
「ちょっと先生、どういうつもり！？なんで樹里が呼び出される訳？」
「あー、何でもないのよ。怒るために呼び出したんじゃないの。」
赤い口紅に、短いスカート。金髪に近いような髪の色。そんなグループの女子達が彼女と共に去っていった。
「しょうがないか。まだ一日目。ゆっくり打ち解けてけばいいもの。それにしてもすごい集団だな。中にはこんな不良みたいなグループもこの学校にはいるんだ。」
などとぶつぶつ独り言を言いながら私は考え事をしていた。
兼山東という生徒を始め、いろんな不満や悩み、問題を抱えた生徒がこの学校にたくさんいるのかもしれない。そんなあなたたちのこと私は絶対に見捨てない。そう堅く決心した時だった。