Chess
先手は白、僕からだ。

遊びなんだ。気楽に行こう。

盤上一番右、h2のポーンを動かそう。

じゃなきゃルークが動けない。

僕はルークがなんとなく好きなのだ。

ポーンは最初の一歩は一気に二マス進める。

丸い頭の小さな駒が、h4へ。

すると、彼女の白い手がさっと伸びた。

黒のポーンが、h7からh5へ。

僕が出したばかりのポーンと、ご挨拶する。

ポーンは駒の取り方が特殊で、斜め前の駒しか取れない。

真正面に位置付けられると、僕のポーンはもう動けないのだ。

もっとも、それは彼女も一緒だ。

ちらりと視線をあげると、彼女は組んだ掌に顎を乗せて目を細めていた。

楽しんでる。

まだゲームは始まったばかりなのに。

僕は、左側にあるナイトに手をつけた。

コイツの動きがまた変則的だ。

L字型に動く、と覚えるといい。

ナイトを、b1からc3へ。

右からはルークで、左かはナイトで攻める予定だ。
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