澄麗会へようこそ
中等部と全く同じデザインの、やる気のない制服をハンガーに掛けたちょうどその時だった。
「柑太郎(かんたろう)、いいか?」珍しく兄がやってきた。西の対屋にある彼の部屋からは俺の部屋は大分遠い。よほどのことがない限り、いつもは携帯で話すのに。
「どうぞ!珍しいじゃん。」
二つ上の兄、橘矢(きつや)は俺とは全く似ていない。切れ長の目、尖った逆三角の顎にまっすぐの黒い短髪は鋭角的な印象を与える。
「お前に渡さなきゃいけない物があったからな。」
「だったら佐山に頼めばよかったのに。」
佐山は兄の付人だ。「いや、これは直接渡さないとまずいから。」
ボソッと言って取り出したのは綺麗なすみれ色の手紙だ。
だが僕は真っ青になった。
「嘘だろ……」
だってこの手紙の招待を知っていたから……
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