とんでも腐敵☆パートナー
「じゃあ、あたしが荷物番する……」
 
「海に浸かりたい奴が海に浸からなくてどうする。俺のことは気にせず遊んでこい。俺は昼寝してる方がいいんだ」
 
「…………親父くさ」
 
「ん? なんか言ったか?」
 
 ポソリと聞こえた呟きに、俺は笑顔で応対した。
 両手の拳でグリコの頭を挟みながらだが。
 
「ふぎっ。あたたたた。なんでもないですぅ~~。朽木さんはステキなヤング~~」
 
 痛そうに涙目で訂正するグリコの顔は面白い。小動物みたいだ。
 
「分かったらさっさと行ってこい」
 
 まだ不満そうな顔をするグリコをしっしっと手で追い払った。
  
 
 
 それからどのくらい時間が経ったのかわからない。
 
 
 立倉が乗ったボートを高地が水上まで引っ張って浮かべるのを眺め。
 
 立倉以外の四人が、楽しげな様子で海に入り、ビーチボールで遊ぶ姿を遠くに眺め。
 
 ゆったりと揺らぐ海面になんとはなしに視線を投げ、潮風に吹かれてる内に海もたまにはいいかもしれない、とふと感じたのを最後に眠気に誘われた。
 

 夢は見なかったと思う。
 
 ただ、微かに波に揺られてるような、奇妙な安息を感じていた。
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