とんでも腐敵☆パートナー
 
「んっ……」
 
 瞼を開いたのと、頬にひんやりとした感触があるのに気付いたのとは、ほぼ同時だった。
 
「なんだ……?」
 
「へへっ。くちーきさんっ♪」
 
 開けた視界にまず飛び込んできたのはグリコの顔だった。悪戯っ子のような表情を浮かべている。
 
 頬に当てられてるのが冷えたジュースの缶だと、グリコの伸ばした手の先を見て気付く。
 どうやらこれが俺の瞼をこじ開けたらしい。
 
「お前な……」
 
 睡眠妨害だ。
 
 と、口に出すのも億劫でグリコの額を弾く。
 
「だって朽木さん、なかなか起きないんだもん」
 
「そりゃ悪かったな……。今、何時だ?」
 
「3時過ぎくらいかな。ちょっと休憩しようって皆が。これ、朽木さんのジュース。ハイ」
 
 突き出してくるジュースの缶を受け取り、頭を軽く振った。意識を完全に取り戻す。
 
 拝島は……まだ海の中だ。高地と一緒に立倉を呼びに行ってるようだ。割と遠くに浮かぶオレンジのボートに向かっていた。
 
 後で拝島を誘ってゆっくり二人で泳ぐのも悪くない。
 
 
「朽木さんって、気付けば拝島さんを目で追ってるよね」
 
 目ざといグリコに指摘され、僅かに動揺する。
 
「そうか……?」
 
「うん、バレバレ」
 
 それは……少し気を付けないといけないかもしれない。
 
「拝島さんは確かに生唾ごっくん涎モンなイケメンだけど、朽木さんにはそれだけじゃないんだね。なんてゆーか特別?」
 
 こいつ……さすがストーカー。よく見てる。
 
「詮索は好ましくないな」
 
 俺は欠伸を噛み殺して言った。まだ覚醒後の倦怠感が抜けてない。
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