とんでも腐敵☆パートナー
「うん、あたしの妄想内に留めておくけど。にひ。愛のある鬼畜攻めかぁ~」
 
「だからそういうことを公共の場で口にするなと……」
 
 ため息を落としながら、冷えたジュースの缶を開ける。
 こいつには何を言っても無駄か。
 
「あ、イケメン集団発見! なんかサーファーっぽい! うは~逞しい体~」
 
 案の定聞いてない。
 
 まったくどういう教育を受けてきたんだか。親の顔が見てみたい……ような見たくないような。こいつとそっくりだと目もあてられない。
 
 当のグリコは俺に背を向け、波打ち際で波と戯れる男達に、邪念たっぷりの視線を送っている。「ひゃ~」とか「おぉ~」とか、奇声を発して怪しいことこの上ない。
 
「あの人達がみんなゲイだったら凄いなぁ……うひひ」
 
 それはある意味凄いが……かなり寒い。
 
「でも全員受けっぽいからなぁ~……ああ、朽木さんがいるか。あの中に朽木さんが入ったら……」
 
 グリコの横顔がうっとりとしたものになる。
 更に怪しさが増してきた。
 
「い、いいかも…………うふ。うふふふっ。っきゃー! く、朽木さん、誰を押し倒したい?」
 
「何を妄想してるんだお前は!」
 
 思いっきり背中を蹴りつけてやった。
 勢い余って顔面から砂浜にめりこむグリコ。
 いい気味だ。
 
 ったく。この変態女め。
 
 そんな漫才を繰り広げてる時だった。
 
 ふと見た砂浜の向こう。数十メールはある距離を、幾組かのカップルやファミリーを超え。気付く。
 
 遠目でも明らかに浮いてる集団。
 
 砂浜を我が物顔で闊歩するそいつらが、こちらに向かってやって来ていた。
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