とんでも腐敵☆パートナー
 思わず首をそちらに回す。
 
 俺がそれに気付いたのと同時に、向こうもこちらに気付いたようだ。驚きの表情を浮かべ、足を止める。俺の視線と奴らの視線が一瞬交差した。
 
 俺はすぐに顔を背け、見なかったことにする。が、奴らはこちらを無視などできないようで、
 
「へへっ……また会ったじゃねぇか」
 
 下卑た笑いを含みながら、近付いてきた。
 
 
 厄介なことになったな……。
 
 俺は少し思考を巡らせた。
 
 奴らとは、先程駐車場で一揉めした連中のことだ。相変わらず軽薄な服装と悪意に満ちた雰囲気。まぁさっきの今で連中が爽やか青年に変貌するわけもないんだが。
 
「あの可愛い子ちゃん達はどうしたんだよ。にぃさん独りお留守番かぁ?」
 
 派手なアロハシャツに白い半ズボンを履いた男が一歩抜きん出て俺の横に立つ。首にはゴールドのチェーン。俺はそれを横目に捉えつつ、顔は浜辺に向けたまま微動だにしなかった。
 
 よく見れば、どっかで見たような服装……って、高地の服か。やはりあいつの恰好はチンピラ臭かったというかチンピラそのものだったようだ。
 
 まぁそれでも高地の方が数十倍マシな見てくれだが。
 
「見ての通りお留守番だ」
 
 俺は気のない素振りで答える。
 
 やり合うのに砂浜は厄介だ。足をとられやすい。相手は五人……なんとか捌けないこともないが、あまり目立つ行動はしたくない。
 
 などと考えてると、グリコが砂浜からがばっと身を起こした。
 
 今の今まで砂浜に突っ伏してたのかこいつ。どういう肺活量だ。
 
「ぶはぁっ! ちょっと! 乙女になんて仕打ちすんの……」
 
 声高に文句を吐きつつ振り返った顔は、男達の姿を目にした途端固まった。
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