とんでも腐敵☆パートナー
「……! さっきの……!」
 
 だが男達の反応はというと。グリコが振り返った瞬間、びくっと震えたが、
 
「な、なんだお前はっ」
 
 やや面食らった様子で、まったくグリコだと気付いていない。
 
 理由は簡単。グリコの顔が一面砂まみれだったからだ。
 
 砂まみれというか、最早砂お化けというか。何故か頭にはカニが乗っている。
 
 かなり異様な光景だった。
 
「忘れたとは言わせないわよ! さっきはよくも祥子たちをっ!」
 
「まず顔を拭け、顔を」
 
 緊張感が台無しだ。
 
 ジュースの缶を地面に置き、手近にあったフェイスタオルを放ってやると、グリコは慌ててそれで顔を拭い、一応は見られる顔に戻る。
 
 何故かチンピラ共はそれを律儀に待ってから、
 
「おっ、お前はっ!」
 
 驚きの声をあげて、後退った。
 
 
 なんだ? そこまで動揺することなのか?
 
 まぁ確かに変な女ではあるが。今は頭にカニを乗っけているし。ていうかいつまで乗ってるんだそのカニは。
 
 と、思ってると、チンピラの中の一人が俺の疑問に答えてくれた。
 
「あっ、あの女! 俺の手に咬みついた女だっ!」
 
 咬みついたのか。思ったよりも無茶をするな。
 
 それでこの殺気か。
 
 チンピラ共は今にも掴みかからんとする様子で、グリコを睨み付けている。
 
 俺はまた可笑しくなって一瞬ふっと口許を緩めたが、笑ってる場合でもないので、それはすぐに封じ込める。椅子から身を起こし、グリコと男達の間を塞ぐように立った。
< 110 / 285 >

この作品をシェア

pagetop