とんでも腐敵☆パートナー
「一人じゃ無理だろ」
いつの間についてきたのか、背後から朽木さんの声がした。顔を真っ赤にして紐を引っ張ってる最中だったあたしは、驚いた拍子にバランスを崩して尻餅をついた。
むぎゅ。確かに、湿った砂に埋もれたボートは、さっきから30センチも進んでない。
簡素な作りなんだけど、二人用の大きさは伊達ではないらしく、見た目よりずっしり重かった。
「無理っぽい」
尻餅ついたまま、頭上の朽木さんを見上げ、へへっと笑う。
もうグラサンは着けてない。いつもの端正な顔。そういえば、さっき外してからずっとそのままだったっけ。祥子を診察する朽木さん、カッコよかったなぁ、なんて思う。
朽木さんは無言でボートの紐を引っ張り、あたしは立ち上がって、ボートを後ろから押した。
さすがに男手は頼りになる。共同作業により、ボートはあっとゆう間に陸に上がった。
続いて空気を抜こうと、栓を掴む。と、
「いたっ」
親指の指先に小さな痛みが走った。
「ありゃ」
見ると、爪の先が割れている。さっきボートを引っ張った時にやっちゃったっぽい。縦に白い筋もできていた。
「どうした?」
朽木さんがあたしの手元を覗き込んで訊いてくる。
「爪割れちゃった。あうう。これじゃネイルできない」
「よく真水で洗っておけ。ネイルなんてしてたのか?」
「うすーいピンク。時々するんだよ」
「着けてるのか着けてないのか分からん化粧に意味があるのか?」
「微妙なピンクが可愛いの! 女の子のお洒落が分かんない攻め男は黙ってなさい!」
キッと朽木さんを睨んで言う。
男ってのは、どうしてこう乙女心を解さない奴らばっかなのか。
いつの間についてきたのか、背後から朽木さんの声がした。顔を真っ赤にして紐を引っ張ってる最中だったあたしは、驚いた拍子にバランスを崩して尻餅をついた。
むぎゅ。確かに、湿った砂に埋もれたボートは、さっきから30センチも進んでない。
簡素な作りなんだけど、二人用の大きさは伊達ではないらしく、見た目よりずっしり重かった。
「無理っぽい」
尻餅ついたまま、頭上の朽木さんを見上げ、へへっと笑う。
もうグラサンは着けてない。いつもの端正な顔。そういえば、さっき外してからずっとそのままだったっけ。祥子を診察する朽木さん、カッコよかったなぁ、なんて思う。
朽木さんは無言でボートの紐を引っ張り、あたしは立ち上がって、ボートを後ろから押した。
さすがに男手は頼りになる。共同作業により、ボートはあっとゆう間に陸に上がった。
続いて空気を抜こうと、栓を掴む。と、
「いたっ」
親指の指先に小さな痛みが走った。
「ありゃ」
見ると、爪の先が割れている。さっきボートを引っ張った時にやっちゃったっぽい。縦に白い筋もできていた。
「どうした?」
朽木さんがあたしの手元を覗き込んで訊いてくる。
「爪割れちゃった。あうう。これじゃネイルできない」
「よく真水で洗っておけ。ネイルなんてしてたのか?」
「うすーいピンク。時々するんだよ」
「着けてるのか着けてないのか分からん化粧に意味があるのか?」
「微妙なピンクが可愛いの! 女の子のお洒落が分かんない攻め男は黙ってなさい!」
キッと朽木さんを睨んで言う。
男ってのは、どうしてこう乙女心を解さない奴らばっかなのか。