とんでも腐敵☆パートナー
「あっ、あの女っ!」
「見られたぞ! 追えっ!」
 
 
 あとはもう逃げるだけ。あたしの横に朽木さんが並んだ。
 
「商店街に行くぞ!」
 
 こくり、と頷いて返す。背後から追ってくる気配。
 
 商店街で派手に暴れれば、警察にすぐに通報されるし、男達も刃物を出しにくい。
 
 駐車場の入り口を抜け、外の通りに出た。
 
「待てっ!」
 
 待つわけがないじゃん。
 
 しかし、ピーチサンダルなので走りにくい。
 商店街までもたないかもしれない。
 
 あたしはサンダルを脱ぎ捨てた。
 
 イテッ! 素足でアスファルト走るのって、結構痛いのね。
 
 でも痛さのおかげで弾みもつく。
 
 商店街の入り口が見えたところで、朽木さんがスピードを緩めて後ろを振り返った。
 あたしはそのまま走り続ける。
 
 背後に聞こえる男達の怒鳴り声。
 
 気にはなるけど、まずはやるべきことをやらないと。
 
 金物屋っぽいお店の中から、丁度おじさんが顔を出したので、
 
「泥棒です! 捕まえようとした人が襲われてます! 警察を呼んでください!」
 
 と叫ぶと、おじさんは慌ててお店の中に引き返していった。
 
 あたしにできることはもうない。
 
 やるべきことはやった――。
  
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