とんでも腐敵☆パートナー
 振り返ると、朽木さんとチンピラ達の影が交差していた。
 
 朽木さんは、殴りかかってくる男達を軽くいなし、効果的に打撃を与えている。
 
 強そうだなーとは思ってたけど、やっぱり滅茶苦茶強い。
 
 相手は五人もいるのに、余裕の表情。
 どころか、楽しそうでさえある。
 
 う~ん。さすが完ペキキャラ。
 死角なし! 朽木さんに死角なし!
 
 でも、五人全員沈めることができるかは、ちょっと難しい。
 
 
 手出しはするな――
 
 
 分かってる。うん、分かってる。
 
 あたしはできることだけ、やればいい。
 
 あたしが加わっても、邪魔になるだけ。もしかしたら人質に取られるかもしれない。
 
 だけど――――
 
 握り締めた拳の間から、クシャッと聞こえる、ビニールの音。
 
 その時気付いた。
 
 まだあたしに、やれることがある。
 
 できることがある。
 
 あたしは口許をぎゅっと引き結び、周囲を見渡した。
 
 この細い路地よりさらに細い横に抜ける道がいくつかある。
 
 ちょっと回り道だけど、反対側の入り口に行ける筈――。
 
 そう思いついた時にはもう。
 あたしはビニール袋を握り締め、走り出していた。
 
 
 あいつらの、でっかいピンクの車は、脳裏に焼き付いてる。
 
 絶対――――
 
 
 逃がさないんだから!
 
 
 
 
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