とんでも腐敵☆パートナー
 今度は大きな声ではっきりと。
 
 って。
 
 
「えええええっ!?」
 
 
 あたしは思わず席を立ち上がった。
 
「ええいっ、何をぬかすかこの脇役顔っ! 祥子に懸想するなんざ百万年早いってのよっ!」
 
 湧き上がる闘志に突き動かされるまま、高地さんの胸倉を勢いよく掴み上げてぐらぐら揺する。
 
「く、栗子ちゃん、落ち着いて。あと脇役顔ってのはさすがにどうかと……」
 
「こんな軟派男代表は脇役顔で十分です! 祥子に指一本触れさせるわけにはいきません! ゴーホーム! 顔を洗って出直してこいってんですよ高地さん! だいたい祥子に相手にされるわけがっ……」
 
 ん?
 
 相手にされるわけがないなら、問題ないか。
 
 あたしは手を離し、すとん、と席に戻った。
 
「まぁ頑張ってくださいな、高地さん」
 
 にこっと微笑む。
 
「うげほっ。はぁ、はぁ。な、なにそのスイッチング? てゆーかグリコちゃんって正直すぎない? 朽木の趣味って変わってるよな……」
 
 喉元を押さえながら呟く高地さんに、朽木さんの箸が飛んできて、
 
「いい加減その誤解はやめてくれないかな高地」
 
 にっこり笑顔と裏腹の殺気すら籠もった言葉に、高地さんは一瞬頬をひくつかせて黙った。
 
 あたしも「変わった趣味」って言葉に引っ掛かりを感じたが、まぁそれはともかく。
 
「でも高地さんって、真昼狙いかと思ってましたよぉ。なんで祥子なんですか?」
 
 高地さんと唯一行動を共にした海の日のことを思い返しながら、ふと浮かんだ疑問を口にしてみる。
 
 あの日、確か最初は「真昼ちゃぁ~ん」なんて、真昼を追っかけてたんじゃなかったっけ?
 
「うん、まぁ俺って美人好きだしさ。真昼ちゃんも凄くステキだったんだけどさ」
 
 指でぽりぽりと頬を掻く、ちょっと照れたような仕草で答える高地さん。
 
「祥子ちゃんは……その、俺の頼みをきいてボートに乗ってくれてさ。そのせいで熱中症で倒れたってのに、自分が悪い、ってきっぱり言ったじゃん。……なんてゆうか…………カッコよかったんだよな」
 
 頬を赤く染めながら俯き、視線を彷徨わせる。
 
 むむ。高地さんのくせにちょっと可愛い。
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