とんでも腐敵☆パートナー
 そんなことより、と再び双眼鏡を目に当て、正面入り口に向き直る。
 
 そこにいるのはいつもよりド派手な格好した高地さん。
 
 シルバーアクセを首や指にこれでもかってくらいに着けてる。更にヒョウ柄のシャツ。何故か白いジャケットの下に着てるのだ。下は黒革パンツにパンクっぽいブーツ。
 
 あれが高地さんの勝負服なのか?
 
 あーあ……あーいう派手な格好、祥子嫌いなのに……。
 
 そんな人目を引く格好に加え、見るからにそわそわ挙動不審な動きを見せるので、周囲の人から訝しげな目で見られまくっててこれなんのお笑い番組? ってな感じで面白い。
 
 祥子が来ても、知らない振りされるんじゃないだろうか。
 
 と思ってるところへ、当の祥子がやって来た。
 
 こっちはいつもと変わらない、シャープな襟付きノースリーブブラウスに、ダークブラウンのパンツ。肩にはカーディガンを軽く羽織ってる。
 
 気合の差が歴然だ。
 
 思わず身を乗り出したところで、不意に肩を叩かれた。
 
 すわ! ポリスメンか!?
 
 警官に声をかけられ慣れてるあたしは、いつでも逃げれるようにと身構えつつ振り返る。
 
 が、予想に反して。
 
「やっ、栗子ちゃん」
 
 そこにいたのは、まったく知らない普通の男の人だった。
 
 黒縁メガネにハンチング帽。白シャツにベストを重ねて着てる。
 
 お洒落なんだか微妙なんだかよく分かんない格好だ。眼鏡がちょっと野暮ったい気もするし。
 
 でも問題はそこではなくて。
 
「あの~どなたでしょう? なんであたしの名前を知ってるんですか?」
 
 百歩譲って記憶からポイ捨てされた知り合いだとしても、今のあたしの格好を見て一目であたしと気付くなんてタダモノじゃない。
 
 少し警戒しながら尋ねた。
 
「あははは。分かんないかな。俺だよ、俺」
 
 するとその探偵のような格好の人は、そう言って笑いながら眼鏡をずらして見せて――
 
 
「は、拝島さんっ!?」
 
 
 あたしは心底驚いた。
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