とんでも腐敵☆パートナー

5-4. レディースデーは平日ときた

<<<< 栗子side >>>>
 
 そーっと。抜き足差し足。
 
 ショーウィンドウに張り付きながら角にある待ち合わせ場所の正面入り口に近付いていく。
 
 二人に気付かれないよう、細心の注意を払って。
 
「栗子ちゃ……あ。いや栗男。くっ。あ、あのさ……もうちょっと普通に行こうよ」
 
 横からあたしのお兄ちゃんに扮する拝島さんがいかにも可笑しさを堪えてる様子で言った。
 
「え? でも、尾行はこうやって建物や柱の影に隠れながら行くんで……だよね? お兄ちゃん」
 
「それは映画やマンガの影響受けすぎだって」
 
 くく、と口元の笑いを抑えながら、拝島さん。
 
「せっかく変装してるんだし、目立たないように近付けばばれないよ。自然に振る舞ってごらん」
 
 すみません、これが普段のあたしの自然な振る舞いなんですけど。
 
 とか思いつつも、背筋を伸ばして普通に歩いてみる。ショーウィンドウに映った自分の姿は、まるっきり野球観戦にでも行く普段はガリ勉の中学生男児だった。
 
「うん、それでおっけー」
 
 微笑みながら頷いてくれる拝島さんは全然あたしと似てないけど、お揃いの黒縁眼鏡がそれとなく同じ印象を与える。兄弟だって言われれば「まぁそうかもな」くらいには思えるかもしれない。第三者から見て。
 
「俺と向き合ってれば怪しまれず俺の影から様子を窺えるでしょ?」
 
 なるほど。二人一組で行動するとそういう利点があるのか。うーん、尾行って奥が深い。
< 149 / 285 >

この作品をシェア

pagetop