とんでも腐敵☆パートナー
 なかなか鮮やかな手並みだ。伊達に軟派経験は積んでないってことか。
 
 あたしと拝島さんも祥子の姿が完全に消えた後、追ってゲーセンに足を踏み入れた。
 
 ガーッと開く自動扉。
 
 入った途端、目がチカチカする店内。同時に賑やかな音が鼓膜を塞ぎ、視覚と聴覚が一気に混乱する。
 
 常に何かが光ったり、動いたり、電子音が鳴り響いたり。五感を刺激してうるさいことこの上ない。
 
 嫌いじゃないけど長く居たいとは思わない場所だよなぁ、ゲームセンターって。
 
「うぅ~~祥子達はどこだろぉ~」
 
 きょろきょろ辺りを見回す。
 結構広いゲーセンだ。
 
 と、不意に。
 
「栗子ちゃん」
 
 いきなり拝島さんの顔が横に現れて、心臓が跳ね上がった。
 
 うはっ! イケメンのどアップ!
 
 拝島さんの口があたしの耳に触れそうなほど近い。
 
『敵艦隊接近中!』
 
 そんなどこぞのシュミレーションゲームのアラート画面が頭に浮かぶ。
 
「な、なななんですかはいじ……お、お兄ちゃんっ」
 
 やばい。むちゃくちゃキョドってるあたし。
 
「あっちあっち」
 
 そう言いながらUFOキャッチャーの台が並ぶコーナーを指差して教えてくれる拝島さん。
 
 なるほど、そこに高地さんと祥子がいる。
 
 それはいいけど、突然顔を近づけないで欲しい。周囲がうるさいから言葉を伝えるには近くに寄らなきゃいけないとは分かってるけどさ。びっくりするじゃん。
 
 耳元で囁かれるとなんか背中がぞわぞわするし。
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